今回お知らせするのは“成年後見人の報酬”について最高裁判所が方針変更をしていく、という記事についてです。
成年後見人になった人に本人の財産から報酬が支払われるということは以前のブログで詳しく書きました。
その報酬の決め方を見直そうとの話です。
本人の財産金額によって決められていた現在の報酬基準から、後見業務の作業量や難易度に見合った報酬となるように、という最高裁判所の方針変更が新聞で取り上げられました。
詳細を見ていきましょう。
まずは東京家庭裁判所が公表している従来の後見人への報酬基準を表にまとめました。
基本報酬 | 月額2万円 |
管理財産が1000万円を超え5000万円以下 | 月額3万円〜4万円 |
管理財産が5000万円を超える | 月額5万円〜6万円 |
(参考:平成25年1月1日付東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」より)
管理財産というのは流動資産を指し、預貯金と株式等のことです。不動産は含まれません。
上記の基本報酬に加え、もしも後見人が本人のために遺産分割のような特別の作業を行った場合、さらに“付加報酬”が加算されます。
報酬は原則として年に1回、後見人が家庭裁判所へ”報酬付与の申立て”を行うことで支給額が決定されます。
記事によると、このような財産額だけをベースとした報酬基準について、成年後見制度を利用している家族等から、「後見人は何もしないのに高額な報酬を取っていく」といった不満の声が上がっていたそうです。
そのため家庭裁判所では後見業務の量や作業負担を基準とする報酬へ変えていこうとなったようです。
平成28年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行されてから、政府としても現在の成年後見制度の課題を解決し、使い勝手の良い制度となり利用者が増えることを目標としています。
この報酬基準の見直しも成年後見制度の課題解決の一環としてのものです。
では実際どのような報酬基準になるのでしょうか。
新たな報酬基準については弁護士山中理司氏が行政文書の開示請求を行い、その開示結果として公にされました。
その開示請求の内容には今まで問題であった点と、今後についてが書かれており、その内容を以下表にまとめました。
従来の懸念点 | 今後のあり方 |
---|---|
後見事務の内容にかかわらず一定の報酬が一律に付与される |
後見事務の内容を問わずに一定の報酬を付与する「基本報酬」という考え方は採用しない方向 |
財産額が多額であるだけで報酬額が高額になる |
財産額が多額であっても後見事務が複雑とは限らず, 財産額を基準に報酬を算出する考え方は採用しない方向 |
財産管理事務以外の事務は,報酬算定の際に評価しづらい。 |
財産管理事務以外にも身上監護事務や後見人支援事務についても高く評面する方向 |
(参考:平成30年9月5日付「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」より)
開示された文書からすると、新たな報酬算定としては預貯金額ではなく、実際にどのような後見事務を行い、それにどれだけ手間がかかったのかを重視するような方向になりそうです。
例えば身上監護の分野は特に事務がなく、預貯金額が多いようなケースで考えると、従来基準では後見報酬は高額ですが、新基準では従来よりも減額が見込まれそうです。
逆に身上監護の分野が煩雑だけど、あまり預貯金が多くないケースでは新基準で考えた方が増額が見込まれます。
報酬を支払う本人の立場で考えると、預貯金が少ない人でも後見報酬が高額になる場合も考えられるのではないでしょうか。
行政文書を読み解くと、今後は財産額基準の基本報酬を廃止し、個々の事務について難易度に応じた「標準額」を決めていく、とのことです。
つまり、個々の事務について標準額と難易度加算があるとのことです。
個々の事務とは何なのか、何をもって困難とするのか、その難易度を算定をするためにどのような資料を求めていくかは今後の検討課題のようです。
このあたりの検討事項を含めて実際の運用を見守っていきたいと思います。
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