2019年4月より後見開始申立時に提出する診断書のフォーマットが変更になることを、以前の記事で取り上げました。(成年後見制度における診断書が改訂されます)
この診断書のフォーマット改訂に加えて、後見開始申立時の運用としてもう1点変更された点があります。
それは“本人情報シート”という書類が増えた点です。
今回はその本人情報シートとは何のための書類なのか、どのような内容で誰が作成するのか、について詳しく解説したいと思います。
後見開始申立時には、後見の類型を決めるために医師によって診断書を作成してもらう必要があります。その際に医師は、本人との面談等で本人の判断能力のレベルを診断します。
しかし、本人との面談だけではやはり正確な診断が難しく、診断の正確性は以前から疑問視されてきていました。
ところが、この本人情報シートを使うことで、その診断をより正確なものにすることが可能になるのです!
以下が本人情報シートの書式になるのですが、日常生活にサポートが必要か、家族を認識できているか、金銭の管理は誰が行っているか等の本人の日常生活の状況に関する設問になっていることが確認いただけるかと思います。
つまり、この本人情報シートを利用することで、医師が本人の日常生活の状況を把握した上で診断書を作成することが可能となります。これにより、本人の判断能力のレベルをより正確に診断することができるようになると期待されているのです。
では、この本人情報シートは誰が作成するのでしょうか?
答えは“本人の生活状況を知る福祉関係者”となります。
福祉関係者とは、具体的にはソーシャルワーカーとして本人の福祉を担当している社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員、相談支援専門員、病院や施設の相談員、地域包括支援センターや、社会福祉協議会等が運営する権利擁護支援センターの職員等を指しています。
なお、いくら本人の介護を日頃行なっていたとしても、本人の家族が作成することはできません。
本人の家族は、この本人情報シートではなく、従来どおり本人の状況報告書や本人情報照会シート(都道府県によって名称などが異なる)で本人の生活状況を記載する事になっています。
なお、本人情報シートは作成をしなくても申立が出来ないわけでは無く、あくまでも任意の書類のようです。
本人情報シートは、あくまで福祉関係者が把握している本人の日常生活や社会生活の状況に関する情報を共有し、本人の支援に活用するために導入した書面ですので、書ける範囲で御協力いただきますようお願いいたします。
本人が福祉サービスを一切受けていない等の理由で本人情報シートが作成できない場合には、その旨を医師や家庭裁判所へ説明すれば、問題なく申立は可能でしょう。
本人情報シートの導入することで、医師が本人の後見・保佐・補助の類型について適切に判断でき、家庭裁判所も本人も家族も納得した診断結果が得られることが望まれます。
ただ、平成31年4月より初めて作成されることになる書類ですので、書類を作成してもらう福祉関係者の人に馴染むまでには、少し時間がかかってしまうかもしれません。
また、本人情報シートがどこまで後見人を選ぶための判断材料となりえるのか、その作成費用はどの程度必要なのか、など実際の運用についてはまだ決まっていない部分もあるため、本人情報シートの運用については今後も注目していきたいと思います。