成人年齢の引き下げに関する後見制度への影響を考える

令和4年4月1日、「民法の一部を改正する法律」が施行され成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。

成人年齢引き下げ後は18歳や19歳の人が親の同意なく単独で有効な法律行為が出来るようになります。

具体例として、携帯電話の購入や、アパートの賃貸契約、自動車のローン契約、クレジットカード作成が出来るようになります。

お酒やタバコ、競馬等の賭け事の年齢制限は従来どおり20歳のままです。

では成人年齢の引き下げは後見制度にはどのような影響があるのでしょうか。

成年後見制度への影響

認知症や知的障害等で判断能力が低下している人のための制度が成年後見制度です。

その名の通り「成年」を対象としています。

令和4年3月31日までは成年後見人を必要としている本人の年齢は20歳以上が対象となります。

これが成人年齢引き下げ後の4月1日からは本人の年齢は18歳以上が対象となります。

また、後見人になれる人にも年齢制限があります。

【民法第847条 後見人の欠格事由】
次に掲げる者は、後見人となることができない。
1 未成年者
2 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
3 破産者
4 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
5 行方の知れない者

未成年者は後見人になれませんが、法律上は令和4年4月1日以降は18歳以上であれば後見人になれることとなります。

未成年後見制度への影響

次に未成年後見についても見ていきたいと思います。

そもそも未成年者が重要な契約を行う場合は親権者の同意が必要です。

では親がいない子はどうするのでしょうか。

親権者と死別した場合や親権者が行方不明の場合は家庭裁判所で”未成年後見人”を選任してもらいます。

未成年後見は本人が成人になると終了します。

令和4年4月1日以降は今まで18歳や19歳で未成年後見人がついていた人も未成年後見が終了となります。

未成年後見人がついていた人もそうでない人も18歳からは一人で契約が出来るようになります。

悪徳業者はこの判断能力がまだまだ完全ではない世代を狙っているので消費者被害にはよくよく注意が必要です。

契約

親なき後問題が早めに顕在化?

最後に未成年で親権者はいるものの、知的障害などで本人自身に判断能力がない場合について整理したいと思います。

現在、知的障害のある未成年者の福祉サービスの契約や施設利用、相続の手続など重要な法律行為については親権者が法的権限をもって行うことができます。

令和4年4月1日以降は子の年齢が18歳以上だと自動的に親権が無くなることとなります。

令和4年4月1日以降は18歳以上であればその人自身が契約をすることとなります。

とはいえ、親が元気なうちは子供の名前で親が手続きをするといったことが多く認められている現状があります。

実際、知的障害のある方が成人になったからといってすぐに不便を感じることはないかもしれません。

しかしながらまとまった金額の預貯金の引き出しや振り込み、相続手続きについては親権者としては出来なくなるので法律上の代理人である「成年後見人」を選任する必要があります。

かなり限定的かもしれませんが、本人が18歳や19歳でこのように成年後見人が必須となるケースに出くわした親御さんは「成人年齢が20歳だったらな」と思うでしょう。

親が元気なうちに知的障害のある子どもの成年後見人を誰に任せるのか、いつくらいに、どのようなタイミングで申立てをするのかといったことを家族で考えることは20歳が成人と決められている現在も考えなければならないことです。

成人年齢が引き下がることで未成年者でいられる時間が少なくなり、親なき後問題を考える時間が今までより早く来るとも言えるでしょう。

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