成年被後見人は遺言を書けるのでしょうか。
答えは「YES」です。
成年被後見人であっても判断能力や意思能力の度合いは様々です。
中にはある程度判断能力があり、自分の意思を明確に表せる人もいます。
その人が「遺言を書きたい」と言ったら成年後見人は具体的にどうしたら良いのでしょうか。
成年後見人は本人を代理して遺言を作成することはできません。
遺言というのはその人だけがすることのできる行為だからです。(養子縁組や婚姻についても同じ考え方です。)
成年後見人が本人の意思を代筆することも不可です。
なお遺言作成にかかった費用を支払うことは成年後見人の仕事です。
では本人が有効な遺言を残すためにはどうしたら良いのでしょうか。
本人がしっかりしている事に対し、医師のお墨付きが必要ということですね。
法律上は何科の医師と限定されていません。
遺言は公正証書でも自筆証書でもOKです。
公正証書の方が後々のトラブル防止になると言われていますが成年被後見人の遺言を作成してくれる公証人を探すのは難しいかもしれません。
というのも成年被後見人が遺言をするというケースは公証役場ではあまりないと思われます。
後々遺言書無効の訴え等を相続人が起こした場合、遺言に関与した公証人も訴訟に巻き込まれる可能性があるためそれを嫌がるのではないでしょうか。
自筆証書の場合は全文を本人が書く必要があるため字を書くという体力も必要です。
遺言ができるかは本人が遺言という難しいことをどれだけ理解できるか、受け答えがしっかりしているかであると言えます。
難しいことがある程度理解出来、受け答えがしっかりしているのであれば後見相当とは言えない可能性があります。
保佐や補助の場合は遺言作成のための医師二人の立ち会いは不要です。
誰の関与もなく遺言が作成できます。
そのため、成年被後見人の遺言に立ち会う医師2人を探すのではなく保佐や補助に類型変更をすることも検討することもできます。
もちろん後見相当ではない、という医師の診断書が必要です。
ただし類型変更という申立ては存在しないため、後見開始取消の審判及び保佐(or補助)開始の審判申立てをすることとなります。
この後見開始取消の申立も保佐開始の申立も現在の成年後見人ができます。
どちらの方法を採るにしても時間と費用を要しますがまずは本人の意思を尊重することが大切です。
本人がどうしたいのか、本人のためには何が最適であるのかを検討し、また管轄の家庭裁判所にも事前に相談の上進めていくことが望ましいでしょう。
【第10条(後見開始の審判の取消し)】
第7条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。