厚生労働省は令和3年12月15日に“成年後見制度利用促進専門家会議”を開きました。
成年後見制度利用促進専門家会議は成年後見制度の現状と課題を見据えながら今後、成年後見制度がもっと普及するためにはどうしたら良いのか、ということを検討する会議です。
会議は弁護士や司法書士、法学の教授、最高裁家庭局長といった法曹関係者や福祉関係者、医師、県知事等のメンバーで構成されています。
公表されている会議資料によると後見制度の一時利用を検討をするとのことです。
成年後見制度は認知症や知的障害などで判断能力が衰えた人に公的な代理人である成年後見人をつける制度です。
成年後見人は本人の利益のために財産管理や福祉サービスの契約、遺産分割や相続手続き等を行います。
一度成年後見人がつけられると本人の死亡もしくは本人の能力が回復する時までその利用が続きます。
認知症を治す薬は今のところないので現状は本人の死亡まで続く制度となっています。
成年後見人には毎年報酬が本人の財産から支払われるためコストがかかります。
基本報酬 | 月額2万円 |
管理財産が1000万円を超え5000万円以下 | 月額3万円〜4万円 |
管理財産が5000万円を超える | 月額5万円〜6万円 |
(参考:平成25年1月1日付東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」より)
毎年お金がかかるし、途中でやめられないのは使い勝手が悪いとのことで制度の利用をためらう人やその家族もいるかと思います。
平成28年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行されてから、政府としても現在の成年後見制度の課題を解決し、使い勝手の良い制度となり利用者が増えることを目標としています。
そのための課題を見つけ改善策を考えるのが専門家会議です。
今回の会議内容をまとめました。
【今後の成年後見制度の運用改善ポイント】
(参考:「第二期成年後見制度利用促進基本計画に盛りこむべき事項(案)」より)
いくつか改善ポイントが挙げられていますがやはり画期的な点は後見人の一時利用の検討です。
もしこれが実現すると相続手続きや不動産の売却、施設入所のための定期解約や高額振り込み等の利用だけで使いたいというニーズに応えられることとなります。
ただし親族や身近な支援者がいない人が財産管理や入院手続き、福祉サービスの契約等の支援を必要とすることもあるでしょう。
このようなケースでは一時利用ではなく継続した後見制度の利用となるかと考えます。
今回の会議では成年後見制度の見直しについての検討であり決定ではありません。
今後、実際の運用がどうなっていくかが注目です。
選択肢があるのは使いやすい後見制度の一歩と言えるので実現の可能性は高いのではないでしょうか。
かんたん後見でもまた新たな情報が出たらお伝えしていきます。