認知症などで判断能力が低下し成年後見制度の利用を検討した時、実際には誰が申立て手続きをするのでしょう。
今回はその申立てができる人、できない人、さらに身寄りがいない人はどうしたらいいのかを見ていきたいと思います。
後見人をつけてほしいという申立てはその申立てをできる人が民法で決められています。
【民法7条(後見開始の審判)】
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
このように誰でも申立てができるわけではありません。
どんなに仲が良くても知人や近隣の人は申立てをすることはできず、さらに本人の家族でも四親等以内の人が申立てできる人です。
四親等以内とは次の家系図の人たちです。
なお配偶者は法律婚をしている人に限られ、内縁の婚姻関係は含まれません。
しかし、世の中には配偶者や子供がいない、兄弟もいない人も多くいます。
また家族がいたとしても後見申立てに協力をしてくれないこともあります。
このようなケースで後見人をつけたい場合はどうしたらいいのでしょう。
民法に決められている通り本人自身が申立てをすることも可能です。
保佐や補助等の申立てはもちろんのことある程度の判断能力が残っているご本人であれば後見類型での申立ても可能です。
実際の本人申立ては地域包括支援センターや社会福祉協議会の支援を受けて行うケースが多いのではないでしょうか。
申立て書類を作成することは本人だけでは難しいので福祉関係者のサポートが必要になって来ると考えます。
また申立て書類の作成は司法書士が代理作成することもできますし、申立ての代理自体は弁護士が行うことができるのでご本人に資力があるのであれば専門家に依頼することも一案です。
また65歳以上の認知症高齢者、知的障害者、精神障害者が身寄りがないなどのケースでは市区町村長が申立てをすることができます。
【市町村長申立てにかかる根拠法令】
○老人福祉法 第32条 市町村長は、六十五歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法第七条、第十一条、第十三条第二項、第十五条第一項、第十七条第一項、第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる。
ここで令和2年の後見等申立てを行った人と本人の関係をグラフ化しました。
市区町村長が1位となっていますので決して珍しいケースではないことがわかります。
今後も核家族化や少子化が進むことで申立てをする人がおらず市区町村長申立てを行うケースは増えていくと予想されます。
また本人に資力がない場合は申立て費用の助成がある自治体もあります。
市区町村長申立ての場合のデメリットとしては支援内容の検討や、本人に本当に申立てをしてくれる親族がいないかを確認するための親族調査といった時間がかかる点が挙げられます。
自治体によっても親族調査等の進め方や助成内容については異なりますので本人がお住まいの自治体に内容の確認が必要です。
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