成年後見人を辞める方法と流れ

成年後見人になったものの、健康状態や家庭事情が変わり辞めたいとなる場合もあるでしょう。

今回はその辞め方と流れを解説していきます。

なお成年後見人を辞める場合であっても、本人の意思能力が回復していない限り成年後見制度自体を止めることができません。

成年後見人の辞任は次の成年後見人の選任とセットとなり交代的変更となります。

チェンジ

辞めるためにはきちんとした理由が必要

一度成年後見人に選ばれたら何の理由もなくただ辞めたい、というのはダメです。

成年後見人になった後にその職を辞めたい場合、正当な理由が必要です。

【民法第844条】
後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

正当な事由かどうかは管轄の家庭裁判所が判断します。

具体的には以下のような場合が挙げられます。

  • 中・長期的に治療が必要な病気になった
  • 転勤などで本人と離れてしまい後見業務に支障をきたす
  • 高齢になり財産管理が難しくなってきた
  • 家族の介護が発生し後見業務に時間を割けなくなった
  • 本人と信頼関係が破綻するような出来事があり関係が悪化した

なお成年後見人に上記事由が発生したとしても今まで同様に本人を支援をできる状況であれば辞める必要はありません。

辞任するかどうかは成年後見人の判断に委ねられていますので慎重に判断することが求められます。

成年後見人を辞任できないケース

成年後見人の辞任について正当な事由と認められにくい場合も見ていきましょう。

  • 不動産売却のため成年後見人に就任したがその目的を達したので辞めたい
  • 後見監督人がつくことになり面倒なので辞めたい
  • 本人の親族と意見が合わないので辞めたい
  • 本人財産が少なく報酬が出ないので辞めたい
  • 書類を作るのが煩雑なので辞めたい

このような場合には家庭裁判所は正当な事由とは認めずに今まで通り業務を遂行してください、となる可能性が高いです。

一度成年後見人に選ばれたからには軽々しく辞められないようになっています。

ダメ

成年後見人を辞めるための流れ

では実際に成年後見人を辞めるための正当事由があった場合はどうしたらいいか流れを見ていきましょう。

成年後見を辞める場合の流れ

  1. 本人に事情説明・意向確認
  2. 正当事由を証する資料収集(診断書や辞令書など)
  3. 自分が辞めた後に後見人になってくれる人を検討(いない場合は家裁に一任も可)
  4. 担当書記官に電話相談or書面で連絡表を提出
  5. 後見人辞任・選任申立書提出
  6. 新しく選ばれた成年後見人に財産引き継ぎ

後見制度は本人のための制度なのでまずは本人の気持ちを確認する必要があります。

自分が辞める事情を説明し、次は他の家族が就任するのかそれとも弁護士や司法書士などの専門家が良いのか話すことが望ましいです。

この時にケアマネジャーや施設の職員など本人の現在をよく知る人も一緒に考えてもらうと良いでしょう。

後見人辞任・選任申立書には辞任に至った事情や本人の意向や周囲との話し合いの内容を盛り込みます。

次の成年後見人の候補者を挙げることはできますがその人が適任かどうかを判断するのはやはり家庭裁判所となります。

なお候補者がいない場合は家庭裁判所に一任もできるため安心です。

次の後見人が決まり、財産を引き継ぐまでは従前通り後見業務をしっかり行わないといけません。

なお今回は辞めたい、という後見人側の話であって後見人に不正があって辞めさせたいという場合は後見人の解任という手続きになるので全くの別物です。

成年後見人辞任・選任にかかる費用

成年後見人辞任・選任にかかる費用
金額 種類
申立書貼付

1600円

収入印紙(800円分2組)

登記用

1400円

収入印紙(申立書に貼らない)

切手代

数千円(管轄によるので担当書記官に確認要)

切手

申立てに必要な印紙代は原則として申立人(旧後見人)負担ですが、次の後見人が決まった審判書に「申立て手数料は本人負担とする」といった文言があれば本人の財産から支出ができます。

申立人の判断で本人財産から支払うことはできないので注意が必要です。

【関連リンク】成年後見制度とは?利用方法やお金の話、デメリットなどを専門家が解説

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