平成31年3月18日に成年後見制度の利用を促進するための専門家会議が開かれ、そこで最高裁は成年後見人の選任について「本人の親族が望ましい」との考え方を発表しました。
これは親族よりも弁護士や司法書士などの専門職が後見人に選ばれることの多い現在、成年後見制度において非常に画期的な方針変更です。
今回はその方針変更の詳細を見ていきたいと思います。
まずはこちらのグラフをご覧ください。
親族後見人の割合は年々減少してきていることが分かります。昨年(平成30年)時点では、新たに選任された後見人のうち、親族後見人はわずか23.2%。この10年で最低の割合となっています。
親族後見人ではなく専門職後見人が選ばれるようになった背景として、本人の財産の使い込みが親族後見人のケースで多く発生したことが挙げられます。
このグラフは、第1回成年後見制度利用促進専門家会議 参考資料4「成年後見制度の現状」から作成したものです。
グラフを見ると、圧倒的に専門職以外の後見人の場合に不正が多いことがわかります。
このようなことから従来の家庭裁判所は、親族後見人よりも法律の知識を持つ後見人の専門職後見人をより積極的に選任していました。
しかしながら親族からは、専門職後見人に本人の財産から報酬が支払われることに不満を感じるという声が挙がることもあったようです。
今回の専門家会議は平成28年に成立、施行された”成年後見制度の利用の促進に関する法律”に基づき政府が有識者を集め設置しました。
その会議で親族が希望をしていない専門職が後見人に選ばれるといった現在の後見制度の課題や今後の成年後見制度のあり方が議論されました。
専門家会議では実際に後見事件を担当する家庭裁判所の裁判官や職員の意見を聞き、日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会などの専門職団体との協議を行い、以下のような後見人の選任についての考え方をまとめました。
◇本人の利益保護の観点からは、後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がいる場合は、これらの身近な支援者を後見人に選任することが望ましい
◇中核機関による後見人支援機能が不十分な場合は、専門職後見監督人による親族等後見人の支援を検討
◇後見人選任後も、後見人の選任形態等を定期的に見直し、状況の変化に応じて柔軟に後見人の交代・追加選任等を行う
つまり、今後は本人のことをよく理解している親族後見人が、時には専門職のサポートを受けながら積極的に選任される、という方針が示されています。
専門家会議で決まった内容は最高裁から各地の家庭裁判所へ情報提供がされています。
各家庭裁判所では今回の方針変更を踏まえ、自治体や各地の専門職団体の意見を聞きつつ実際の事案に適用していくということです。
今回の方針変更は今まで親族が選ばれる可能性が低いのであれば成年後見制度を利用したくない、と考えていた方たちに朗報であり、後見制度にとっても非常に画期的な転換となりそうです。
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