元気なうちに自分の後見人を決めておける制度、それが“任意後見制度”です。
自分が信頼できる人に認知症になった後の財産管理を任せられるというのは、老後の備えの一つとして安心です。
でも、実際に任意後見制度を利用する場合に必要となる費用はいくら位なのか、という点がわからないと実際に利用をすることは不安ですよね?
今回は任意後見制度におけるお金の話について、詳しく見ていきたいと思います。
任意後見制度の利用に関する費用は大きく3つに分けられます。
1つ目は任意後見制度を始める時に必要となる公証人への手数料です。
任意後見制度を利用する、と決めた時は必ず公証役場で任意後見契約書を作成する必要があります。
公証役場には元裁判官や元検察官等といった法律職経験が長い人の中から法務大臣に任命された“公証人”という人がいます。
公証人は任意後見契約書を作成する場合、事前に契約書の内容をが法的に問題がないか等をチェックしてくれます。
事前の確認ができた後、最終的には本人と任意後見受任者が公証役場に出向き、公証人から契約書の内容の読み聞かせを受けた後に公正証書が完成します。(公証人は自宅や病院等に出張もしてくれます。)
公証人への手数料は、任意後見契約書の枚数等によって変動がありますが約3万円です。
2つ目は任意後見人に支払う報酬です。
この報酬は、後見人の判断能力が衰えて後見業務がスタートした後に発生するものです。
報酬額は、任意後見契約書の中で予め決めておきます。
契約書の中で無報酬と決めても構いませんし、月額5万円、といった内容で決めておくこともできます。ただし、無報酬では任意後見人を任された人もきちんと仕事をしてくれるかわかりません。
任意後見人は業務が開始すると財産の管理や裁判所への報告などの作業負担があるため、無報酬の場合にやる気を失ってしまうというリスクがあります。
任意後見人を家族にお願いする場合でも、ある程度の報酬を支払うと決めておくことをお勧めします。
3つ目は任意後見監督人に支払う報酬です。これは2つ目の任意後見人への報酬と同様に、本人の判断能力が衰えて任意後見が実際に始まった後にかかる費用です。
任意後見監督人は家庭裁判所と一緒に任意後見人の業務をチェックする人です。
任意後見制度の場合は、法定後見制度と違って、家庭裁判所が必ず監督人を選びます。
任意後見監督人に支払う報酬額は家庭裁判所が本人の財産によって決定するため任意後見契約書の中で予め決めておくことはできません。
なお報酬額の目安は、月額1万円から月額3万円くらいです。この金額は法定後見制度を利用し、専門職後見人が選ばれた時に支払う報酬の半分くらいです。
東京家庭裁判所では法定後見制度の場合、基本報酬が月額2万円、預貯金や有価証券等の管理財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合には基本報酬額を月額3万円〜4万円、管理財産額が5000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円〜6万円としています。
(参考:平成25年1月1日付東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」より)
任意後見制度は法定後見制度に比べ、本人が希望する人が後見人になれるという点や任意後見人に支払う報酬を決めておけるという点で自己決定権が尊重される制度であると言えます。
ただし、任意後見人を家族や知人になってもらう場合は、その人にも任意後見制度や報酬についての理解を深めてもらうことが必要不可欠です。自分の財産を安心して任せることができる人を事前に選んでおくことは、安心な老後生活の一翼を担うことになります。
【関連リンク】成年後見制度とは?利用方法やお金の話、デメリットなどを専門家が解説