後見開始申立ての手順を完全解説!

後見開始申立ての手順を完全解説

成年後見制度を利用するためには、まずは家庭裁判所へ後見開始の申立て(開始申立て)を行う必要があります。
開始申立てを行うと、家庭裁判所が後見開始の審判を行い、後見人を選任して成年後見制度が開始となります。

しかし、いざ「開始申立てを行おう」と考えても、何から手を付ければいいかわからないかと思います。そのため、今回は、法定後見の開始申立ての手順を完全解説します!

ご自分で開始申立てを行おうと考えている方はぜひ参考にしてください。

※なお、説明を簡素化するため、親族が申立人となり申立ての際の類型が「後見」のパターンについての説明を記載していますが、「保佐」、「補助」であっても基本的な手順は同様となります。

※今回は全体の流れの説明を行うため、各手順の詳細は、また別途ご説明させていただきます。

開始申立ての前提事項

開始申立ての手順を説明する前に、成年後見制度を利用するにあたって、必ず認識しておいて頂きたい前提事項を以下に記載します。

■申立ての際に候補者を決めることができる

後見人の候補者を指定して申立てを行うことが可能です。裁判所は、その候補者が後見人に選任しても問題がないかどうかの判断を行います。

なお、後見人の候補者がいない場合には、「裁判所に一任する」ということも可能です。その場合には、裁判所にて適当な人を後見人として選任することになります。

■候補者が必ず後見人になれるわけではない

上記の通り、候補者を決めて申立てを行うことはできますが、必ずしもその候補者が後見人に選任されるわけではありません。裁判所が「この候補者は後見人にふさわしくない」という判断を下した際には、裁判所が別の後見人を選任することがあります。

最近の傾向としては、財産が一定金額を超えている、もしくは親族間で揉め事があるような場合には、親族の候補者が立てられていても専門職の後見人が選任される、ということが多い現状です。

■後見人が選定された場合、その結果を拒否することはできない

上記の通り、裁判所の判断で候補者以外の人が後見人に選任されることもあります。
しかし、当初想定していなかったとはいえ、後見人が選任されれば、その後見人に対する異議を申し立てることはできません。

これらの注意事項を十分に理解してないと、成年後見制度を利用した結果、想定外の状況が発生してしまいます。
必ず上記の注意事項を十分に理解した上で、開始申立てを行うようにしてください。

開始申立ての全体の流れ

開始申立ての全体の流れは以下の図の通りとなります。

申立ての流れ

以下、各手順の概要について説明をしていきます。

(1)申立て先となる家庭裁判所の決定

後見開始の申立て先となる家庭裁判所を決定します。
成年後見に関する手続きの管轄は家庭裁判所です。地方裁判所や簡易裁判所ではありません。どこの家庭裁判所へ申立てをするかは基本的には、被後見人(本人)の住民票上の住所をベースに決まるため、申立人の都合で決められるものではありません。

そのため、本人の住民票上の住所を確認し、その住所を管轄する家庭裁判所に連絡をしてください。

日本全国には300を超える家庭裁判所の支部や出張所があるので、そこからご本人の住所地に対応する家庭裁判所を確認することが必要です。

以下に、本人の住民票上の都道府県を選択することで、問い合わせ先の裁判所と連絡先がわかる表を用意しました。
「家庭裁判所の連絡先」に記載されたリンク先にアクセスして、記載された連絡先に連絡してください。

連絡をする時は、「後見開始の申立てを検討しているが、管轄を確認したい。」と伝えるとわかりやすいです。

※リンク先によっては、家庭裁判所のどの支部がどの住所を管轄しているかが明記されていないものもあります。そのような場合は、最寄りと想定される支部に連絡して、その支部に申立てを行うことで問題ないかを確認してください。

住民票上の住所(都道府県)
問い合わせ先家庭裁判所

家庭裁判所の連絡先

なお、家庭裁判所によっては「本人の住民票上の住所」ではなく、「本人の現在の居住地」を基準に管轄を決めるという家庭裁判所も存在します。

そのため、本人の住民票の住所と居住地が異なる場合(病院に入院していたり、施設に入所していたりする場合)には、裁判所にその旨を伝えて判断を仰ぐようにしてください。

(2)福祉関係者に本人情報シートを書いてもらう

本人情報シートのフォーマットの取得

家庭裁判所のホームページから『本人情報シート』のフォーマットを入手します。

各家庭裁判所のホームページにアクセスすれば、『診断書』を含めて開始申立てに必要な資料一式をインターネット上からダウンロードすることができます。
もしインターネットがご利用できない方は、返送用の封筒を同封した郵便を利用して、裁判所から資料を返送してもらう方法も利用可能です。

福祉関係者による本人情報シート作成

次に担当ケアマネ、地域包括支援センター職員、医療相談員など本人の状態をよく知る福祉関係者に本人情報シートの記入を依頼します。
もしもそのような人がいない場合はこの書類の作成については省略できます。

(3)診断書を取得して医師の診断を受ける

後見開始申立ての手順を完全解説! - 3

家庭裁判所が後見の類型(後見、保佐、補助)を決定するために必要となる『診断書』を作成します。

診断書のフォーマットの取得

診断に必要となる『診断書』のフォーマットを入手します。

本人情報シートと同様に家庭裁判所のホームページからダウンロードもしくは郵送等で取り寄せを行います。

医師による診断

次に医師による診断を受けてください。
通常は、本人の状態を日頃から把握しているかかりつけのお医者さん(主治医)に診察して頂き、『診断書』に記入をしてもらいます。

この時に福祉関係者に記入してもらった本人情報シートを医師に渡します。(本人情報シートはコピーを取っておきましょう。家庭裁判所にも申立て書類として提出します。)

なお医師の中には「うちでは診断書を発行できません」という方もいることがあります。
そのような場合には、かかりつけのお医者さんに別の医師を紹介してもらう、もしくは自分で探すなどして、別の医師に発行してもらえば問題ありません。

何科の医師でも構いませんが、『診断書』は申立ての類型(後見、保佐、補助)を裁判所が決定するための重要な情報となります。そのため、必要以上に本人の権限が制限されてしまわないように、基本的には精神科や脳神経外科などの専門医に頼むことが望ましいです。

(4)必要な各種書類を収集

開始申立てに必要となる各種書類を収集します。

A. 財産関連の書類

本人が保有する財産を証明できる書類を収集します。ローンなどの残高もマイナスの財産となりますので、負債に関する情報も忘れずに収集するようにしてください。

必要な書類 ・本人が所有する不動産登記簿謄本
・本人の通帳・定期預金証書コピー
(1年分。通帳は可能であれば最新日時まで記帳。)
・本人の保険証券コピー(両面)又は保険契約が記載された通知書
・本人の株式残高報告書・通知書等
・(本人が車を所有の場合)車検証コピー
・本人の負債に関する契約書コピー
・本人の負債に関する残高証明書・返済予定表コピー


B. 収入・支出に関する書類

本人の収入および支出に関する書類を収集してください。
具体的には、以下のような書類が必要となります。ただし管轄の家裁によって追加で必要なものもしくは不要である書類もあります。

収入 ・本人の年金通知書コピー
・本人の給与明細書コピー
・本人の確定申告書コピー
・(賃料収入がある場合)賃貸借契約書コピー
支出 ・本人の施設利用料コピー(3か月分)
・本人の健康保険料、介護保険料の通知書コピー
・本人の固定資産税納税通知書、評価証明書コピー
・本人の家賃・地代の支払いがわかる資料(契約書、領収書)コピー


C. 戸籍・住民票

本人や申立人、候補者の住民票・戸籍謄本などを収集します。

必要な書類 ・福祉手帳(障害者手帳や療育手帳、愛の手帳)写し
・本人の戸籍謄本
・本人の住民票(本籍地記載のもの・マイナンバーの記載のないもの)
・申立人の戸籍謄本
・候補者の住民票(マイナンバーの記載のないもの)


上記は一般的な必要書類となります。
本人が入院中などで添付できない書類がある場合はその旨を家庭裁判所へ伝えます。

D. 必要な費用

開始申立てにおいては、以下の費用が必要となります。

必要な費用 ・申立手数料(収入印紙)800円(同意権追加の場合+800円・代理権追加の場合+800円)
・登記手数料(収入印紙)2600円
・切手代5000円前後
・鑑定料10万円前後(申立時には不要。鑑定を行うケースと行わないケースがあります。申立て後裁判所が判断します。)


申立手数料、登記手数料は現金ではなく収入印紙になりますのでご注意ください。
また、各費用は家庭裁判所や申立てする類型によって異なりますので、必ず管轄の裁判所に金額を確認してください。

なお、収入印紙や切手は、郵便局や裁判所で販売しています。

(5)各種書類の記入

上記で収集した書類の内容を参考に、開始申立てに必要な書類を作成します。

裁判所のホームページからフォーマットをダウンロードするか、裁判所から郵送にて取りよせてください。

A. 開始申立書

後見制度の利用を開始を希望する旨の申立書です。申立人、本人、候補者の名前、住所、生年月日などの情報を記入します。
また、申立ての理由や申立ての類型(後見、保佐、補助)も記載する必要があります。

申立ての類型は、『診断書』の内容に従って申立てを行います。
申立人の判断ではなく医師の診断が重要であるため本人の判断能力についての意見という欄を要チェックです。

B.財産目録

(3)-Aで収集した情報を基に、申立て時点の本人の財産を整理して記載してください。

財産は、現金、預貯金、土地・建物などの不動産、株式、保険などのプラスの財産だけでなく、ローンや誰かに立替えてもらっているお金などのマイナスの財産も記載する必要があります。

今後、ここに記載した財産を後見人にて管理していくことになりますので、基本的には全ての財産を調査し、漏れなく記載するようにしてください。

 

C.収支予定表

(3)-Bにて収集した情報を基に、本人の収入と支出の予定を整理して記載します。

予定というと未来の予測をするみたいでなんだか難しく感じてしまいますが、過去の収支と支出の情報を参考にして算出すれば問題ありません。

D.親族同意書

申立てについて、親族が同意していることを証明する書類となります。必ず親族の同意を得て、親族ご本人に押印してもらってください。

同意書の必要な親族の範囲は,将来,ご本人の相続人となる方(推定相続人)です。

親族を候補者として申立てを行う場合、親族からの同意書が得られないと、親族間にトラブルがあると判断をされる可能性が高くなります。
その場合、候補者が後見人に選任されない可能性が高くなりますので、可能な限り同意書を集めるようにするとよいでしょう。

その他、『親族関係図』、『申立事情説明書』、『候補者事情説明書』などが必要となります。また、本人が法定相続人となる相続が発生している場合は『相続財産目録』も必要になりますので、申立てに必要な書類は、必ず管轄の裁判所から情報を入手してください。

(6)申立て(面接日の予約)

必要な書類の作成が完了し、提出すべき書類の収集が完了したら、各裁判所から展開されているチェックシート等を利用して、必要な書類が全部準備できているかをチェックしてください。

上記チェックシートによるチェックとチェックで判明した不足事項への対応が完了したら、管轄の家庭裁判所へ連絡します。

「後見開始申立ての書類が揃ったので申立てをしたい」旨を伝えます。

家庭裁判所によって面接の日時を予約することになるか、先に書類を送ってくれとなります。

面接には、関係当事者として本人(被後見人)、申立人、後見人候補者などの出席が必要となります。ただし、本人の体調等により裁判所に行くのが困難であれば、無理に同席する必要はないので、予約時に裁判所に相談してください。

(7)調査(面接の実施)

成年後見 面接

その後、事前に予約した時間で、裁判所の調査官の面接を受けます。
面接では以下のような質問をされるようです。

・申立に至る事情
・本人の生活状況、判断能力、財産状況
・ほかの親族の意向
・候補者について、その適格性(財産を管理する立場にふさわしいか)など

面接というと少し戸惑ってしまうかもしれませんが、基本的には、作成した書類の内容に対する確認の質問になります。
開始申立ての各種書類を作成した申立人の方であれば、とくに迷うことなく回答可能な質問になります。

なお、面接の時間は、30分から1時間程度のようです。ただし、資料の内容に不備などがある場合には、1時間を超えることもあるようですので、面接時間は余裕を見ておくと良いでしょう。

(8)審理〜審判の確定

裁判所での面談終了後、1ヶ月〜3ヶ月の期間で審理が行われます。

審理の内容によっては、裁判所より以下のA〜Cの対応を求められることがあります。

A. 本人の面談

裁判所での面談に本人が出席できなかった場合、調査官が本人の元を訪れて面談を行う可能性があります。

B. 親族への意向照会

家庭裁判所の判断の参考とするため、本人の親族に対して書面などにより申立ての内容を伝え、親族としての意向を照会する場合があります。

C. 鑑定

本人の判断能力を医学的に判定するための手続きです。親族からの情報や診断書の内容などを総合的に考慮して本人の判断能力を判断できる場合は,鑑定が省略されます。
最近では、鑑定が実施される割合は10%を切っている状況ですので、鑑定を求められる可能性は低いと考えておいてよいでしょう。

なお、鑑定が行われる場合、別途、鑑定費用が必要となり、その金額は5万円〜10万円となります。

上記の面談や調査が完了したあと、裁判所は後見開始の審判を行います。
後見開始の審判と合わせて、後見人を選任します。この際、複数の後見人を選任することや、後見監督人を選任することもあります。

また、保佐開始、補助開始の申立てであれば、必要な同意権や代理権の設定も行います。

審判後の流れ

審判後、不服申立て期間などを含めて約1ヶ月ほどで登記までが完了します。

不服申立て期間

審判書が関係者に届いてから2週間以内であれば、関係者は「審判に対する不服申立て」を行うことができます
ただし、誰が後見人になるかという点については不服を申し立てる事はできません。

登記手続き

審判が確定すれば、家庭裁判所から、東京法務局に審判内容を登記してもらうように依頼を行います。

登記の依頼後2週間程度で、後見人等が登記事項証明書を取得できるようになります。
これで、申立ての手続きが全て完了します。

上記の通り全体の流れは単純ですが、各書類には専門用語も多く理解に時間がかかってしまうため、書類の作成にはかなり時間をとられてしまうことになるでしょう。

そのため、今後も本ブログにおいて、申立てに関する各書類の作成方法の詳細もご紹介したいと思います。

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