成年後見人は、後見をされる本人(被後見人)と後見人との関係によって、大きく以下の3つに分類することができます。
今回は、上記のうち、プロが介在することになる専門職後見人について、かんたんにご説明します。
専門職後見人とは、名前の通り“専門職による後見人”を指します。
具体的にどの専門職が含まれるのか?という定義に明確なものはないようですが、一般的には以下の士業の人を指すようです。
つまり、法律や福祉に関する専門的な知識を持った後見人を”専門職後見人”と呼ぶということです。
専門職後見人には、専門的な知識を持っていることにより得られるメリットもありますし、それ故のデメリットもあります。
次章以降で、そのメリット・デメリットを説明します。
専門職後見人のメリットは、大きく2点あります。
(1)専門的な知識によって被後見人を手厚くサポートすることが可能
専門職後見人は専門的な知識を有していることから、金銭管理や身上監護などにおいて被後見人が不利益を受けないように支援することが可能な点です。
また、一般人には複雑なため労力が必要となる後見業務を、より効率的に実施することも可能となります。
(2)後見人による不正の発生件数を減少させることが可能
専門職後見人が選任されれば、後見人による不正の発生件数を減少させることが可能となります。
被後見人の財産を使い込んでしまうような後見人の不正行為は、成年後見制度の大きな問題となっているのですが、実は専門職以外の後見人による不正がその9割を占めている実情があります。
そのため、専門職後見人を選任することは、後見人の不正の発生件数を減少させることの近道となり得るのです。
専門職後見人は、被後見人とは血縁関係のない第三者であることに加えて、法的な知識により不正行為の範囲を明確に理解できているため、不正を行う可能性が低くなるということですね。
専門職後見人の利用にはいくつかのデメリットがあります。
(1)専門職後見人には報酬が発生してしまう
専門職後見人が選任された場合、その専門性に対する対価(報酬)を支払う必要がでてきます。
これは、被後見人の親族から見た場合には、いずれ相続するであろう財産がどんどん目減りしてしまうことになるため、非常に大きなデメリットとなります。
なお、専門職後見人の報酬額は、最終的には裁判所が決定しますが、被後見人の財産に基づいたルールが定められています。
管理財産額 (預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額) |
基本報酬 |
---|---|
1,000万円以下の場合 |
月額2万円 |
1000万円超え5000万円以下 |
月額3万円〜4万円 |
5,000万円超え |
月額5万円〜6万円 |
(※上記は、東京家庭裁判所から発表されている情報となります。各家庭裁判所によって報酬額の基準は異なる可能性がありますので、正確な情報が必要な場合には各管轄の家庭裁判所にご確認ください。)
1ヶ月分の金額としてはそこまで大きくない金額ではありますが、例えば後見の期間が10年だった場合には、財産の1割以上を報酬として支払うことになってしまいます。
(2)身上監護が不十分になる可能性が高い
また、専門職後見人は後見人と血縁関係がないため、親族後見と比較して身上監護が不十分になってしまう可能性が高まります。
後見人の業務には、身上監護の一環として「本人の状況に変化がないか定期的に本人を訪問し生活状況を確認すること」も含まれています。
しかし、被後見人と血縁関係がなく、また仕事として後見業務を行っている専門職後見人は、親族後見人と比較すると、どうしても身上監護が不足しがちになってしまうようです。
被後見人の意志を尊重するためには、本人と定期的にコミュニケーションを取り本人の意志を把握することが必要不可欠です。
しかし、専門職後見人は本人とのコニュニケーションが不足しがちになってしまうことから、本人や親族との間に大きなトラブルを引き起こしてしまうという状況も発生しているようです。
親族間での揉め事がおきている場合や財産が一定金額以上ある場合には、裁判所の判断で専門職後見人が選任される可能性が高くなります。
(参考:成年後見人になるための条件は?候補者が必ず選任されるのか?)
実際に、専門職後見人は年々増加しています。
しかし、専門職後見人であっても、実は不正がまったくないというわけではありません。
また、デメリットにも記載している通り、身上監護がおろそかにされてしまう可能性があります。
専門職後見をお考えの方や、親族後見が希望ではあるものの選任が難しい状況だと想定される方は、事前に信頼できる専門職の方を探しておき、その人を候補者として申立てを行うことが、成年後見制度をトラブルなく利用できるコツだといえるでしょう。