わかりやすい!成年後見人、保佐人、補助人の違い

成年後見制度の利用を検討し始めると“成年後見人”、“保佐人”、“補助人”という3つの単語を目にする機会がありませんか?

成年後見人という言葉は聞いたことがあっても、日常では保佐人や補助人という言葉はなかなか耳にすることがないので、成年後見人とは何が違うのか、手続きやできることに共通点はあるのかなどを見ていきたいと思います。

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成年後見人or保佐人or補助人のいずれが必要かどうかは本人の判断能力で振り分けられる

認知症などで成年後見制度を必要としている方の中には、寝たきりで判断能力がほとんどない方もいれば、身の回りのことはある程度一人で出来るけど、相続手続きなどの難しい法律行為の判断は一人でできないという方もいます。

成年後見制度はそのご本人の判断能力を医師の診断書を基に「後見相当・保佐相当・補助相当」の3段階に分けています。

  • 後見相当・・・常に判断能力がない(民法7条)
  • 保佐相当・・・判断能力が著しく不十分(民法11条)
  • 補助相当・・・判断能力が不十分(民法15条)

判断能力が後見相当の人に付けられるのが成年後見人、保佐相当の人に付けられるのが保佐人、補助相当の人に付けられるのが補助人です。

なお、後見人と成年後見人は同じ意味です。民法には成年後見人と記載があるので正式には成年後見人ですが、家庭裁判所の書類は呼び方でも後見人、とだけされていることが多いです。

なぜ後見人だけではなく、「成年」という2文字が付いているかというと、親権者がいない子のために家庭裁判所には「未成年後見人」という制度があるためそちらと区別するためです。

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成年後見人、保佐人、補助人は権限が違う

3つの類型の違いを表にまとめると以下の表のようになります。

法定後見制度の3類型について
後見 保佐 補助
申立時に本人の同意 不要 不要 必要
申立てができる方 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市区町村長など
成年後見人等の権限 代理権
同意権(民法13条記載)
同意権(民法13条以外) ×
制度を利用した場合の資格などの制限 医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失う 医師、税理士等の資格や会社役員、公務員等の地位を失う なし

〇・・・必ず付与される △・・・申立てをすることで付与可能 ×・・・付与されない

【民法13条に記載された保佐人・補助人の同意権や代理権にかかる9つの法律行為の内容】

  • 貸したお金の返済を受けたり、または、逆にお金を貸し付けたりすること
  • 借金をしたり、他人の保証人になること
  • 不動産などの重要な財産を取得したり売却したりすること
  • 訴訟を起こしたり、取り下げたりすること
  • 贈与や和解などをすること
  • 相続の承認や相続放棄、遺産分割をしたりすること
  • 贈与を受けることを拒否することや、遺贈の放棄をすること、負担付贈与や遺贈を受け取ること
  • 建物の新築、改築、増築、修繕を行うこと
  • 長期の賃貸借をすること

成年後見人の権限を詳しく!

与えられる権限を解説すると、成年後見人の場合は日用品の購入以外は全ての法律行為について代理権があります。

代理権とは本人の代わりに手続きを行うことができる権利です。

例えば、預貯金の解約や不動産の売買、相続手続き、福祉サービスの契約等の際は、成年後見人が本人の代理人として手続きができます。つまり、家庭裁判所の監督や許可の下、成年後見人自身の名前やハンコで手続きが出来るということです。本人のハンコや本人からの委任状、手続きの場への同席等は一切不要です。

なお、なぜ上記表のうち保佐人や補助人に与えられる同意権が成年後見人にないかというと、成年後見人の持つ財産管理についての総合的な代理権でカバーされるため同意権が必要ないからです。

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保佐人の権限を詳しく!

保佐人に与えられる権限ですが、保佐人には成年後見人と違い基本的には代理権がありません。その代わりに上記表の民法13条で決められた9つの法律行為について“同意権”が与えられます。

同意権というのは例えば、本人が不動産の売却など重要な手続きを行う際に、本人が決めた行為に保佐人が同意を与えることです。つまり、本人がある不動産を、この相手方に、いくらで売るということを決めた場合、その内容に保佐人が同意というお墨付きを与えることです。同意をしないで行った手続きは保佐人が取消しをすることができます。

後から取り消しができる、ということは取引の相手方が不安定な立場になるため、基本的には重要手続きに関しては本人と保佐人が一緒に手続きを行うこととなります。重要な契約書類には本人と保佐人の名前とハンコが必要ということです。

なお保佐人は、制度利用開始の申立て後に別途追加で申立てを行うことで、同意権ではなく代理権を持つ(=代理権の付与)ことができます。この場合は民法13条記載の9つの法律行為についてでも、それ以外の法律行為でも構いません。また、9つの法律行為以外の法律行為について同意権を付けること(=同意権の拡張)ができます。

補助人の権限を詳しく!

補助人は上記表の民法13条で決められた9つの法律行為のうち一部についてのみ同意権や代理権を与えられることとなります。全ての法律行為に同意権や代理権を付けることはできません。

補助人は成年後見制度の3つの類型のうち一番ご本人の判断能力があるケースのため、なるべく本人にできることは本人が行い、特に本人が必要かつ難しい手続きだけ補助人に手伝ってもらおうという考え方です。

開始申立て時の手続きの違い

成年後見人、保佐人、補助人の開始申立時に提出する書類の中には成年後見人と保佐人、補助人の2つのグループでは違いがあります。

大きな違いとしては、保佐相当、補助相当の場合は自動的には代理権や同意権が付かないため、代理権や同意権を希望する場合はどのような手続きの代理権や同意権を付けたいのかという申立て書類を出すこととなります。

例えば、保佐相当で不動産の売却手続きを保佐人が代理して行いたい場合は、不動産の売却についての代理権を付けてもらうように申立てを行います。
ただし、保佐人や補助人に代理権を付けるためにはご本人の同意が必要です。

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選ばれた後の手続きの違い

成年後見人や保佐人、補助人に選ばれた後は、初回報告や定期報告の際に提出する財産目録や収支状況報告書の提出について、保佐人や補助人に財産管理についての代理権が与えられているかによって変わってきます。

例えば、介護や福祉サービスの締結をする代理権しか与えられていない保佐人は財産目録や収支状況報告書の提出義務がありません。本人の財産について管理をする権限がないので、財産の報告義務もないということです。
財産管理権のある保佐人は成年後見人と同様に財産目録や収支状況報告書の提出義務があります。

保佐人や補助人は成年後見人よりも制限のある代理権や同意権がついているため、保佐人や補助人に選ばれた場合は自分はどのような代理権や同意権があるのかをよく理解して事務を進めていくことが必要となります。

【関連リンク】成年後見制度とは?利用方法やお金の話、デメリットなどを専門家が解説

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