昨年(令和2年)の『成年後見関係事件の概況』が最高裁判所より公開されました。
この『成年後見関係事件の概況』は、成年後見制度の利用に関する統計情報を最高裁が公開しているものです。
成年後見制度が開始された平成12年から毎年情報が公開されています。
具体的には、
などの情報が公開されており、この資料を読み込むと最新の成年後見制度の動向が見えてきます。
まずは、成年後見制度の申立件数について見ていきましょう。
令和2年の申立総数は対前年比約3.5%の増加となっています。
昨年は新型コロナウィルスの影響で人の動きが少なかったため申立て件数も減るのではないかと思いましたが逆でした。
家族のことや、お金のこと、老後のことを考えたりする時間が増えたことに起因するのかもしれません。
また類型別だと後見は前年比0.4%減、保佐は11.6%増、補助は30.7%増となっており、保佐や補助といった判断能力がある程度保たれている人の制度利用が増えています。
とはいえ後見類型が約70%を占めている現状です。
任意後見監督人選任申立は対前年比1.3%減です。
任意後見制度は元気なうちに自分の後見人を決めておける老後の備えとして有益な制度ですがまだまだ活用されている数字とは言えないでしょう。
これは昨年だけの数字なのか今後も減少していくのか来年以降もチェックしておきたいですね。
成年後見制度の利用には時間がかかると思われる人がいるかもしれません。
確かに平成12年に制度が始まった頃は審理期間が4ヶ月以上かかる割合が7割弱でした。
現在は審理期間がかなり短縮化しています。
2ヶ月以内の終局が70.1%(前年は75.6%)、4ヶ月以内の終局が92.4%(前年は94.4%)という結果です。
前年比で審理期間が若干延びているのは令和2年4月からの緊急事態宣言下では調査官が交代勤務をしたり、本人調査を延期する等の対応をしていた家庭裁判所があったからではないかと推察します。
後見の申立てができるのは本人及び本人の4親等内の親族、任意後見人等、そして市区町村長です。
昨年までの申立人1位は本人の子でした。(全体の22.7%)
今回は申立人1位が市区町村長となっています。(全体の23.9%)
市区町村長の申立ては前年比でも12.5%の増加となっていますので自治体が成年後見制度の利用に積極的になっていると言えるのではないでしょうか。
ここ数年、親族ではなく弁護士や司法書士など専門職後見人が選ばれることが多い傾向でしたが今回さらに拍車がかかった数字となりました。
親族後見人が20%以下という衝撃的な数字に見えますがさらにデータを読み込むと決してそうではないことがわかります。
今回から新しく申立時の候補者データが公開されるようになりましたのでこちらのグラフをご覧ください。
親族を後見人にしてほしいという申立て自体が申立て全体の23.6%なのです。(ただしこの統計を取り始めたのは令和2年2月からとのことです。)
親族が後見人の候補者になっていることが少ないことがわかります。
むしろ親族を候補者にしている場合の申立ては高い確率で親族がそのまま選ばれているとも読める数字です。
そもそもの申立ての際に親族の候補者が少ない、という今回のデータからの次のようなことが考えられます。
後見制度の利用は年々増加傾向であり、令和2年12月末時点における利用者数は23万人を超えています。(後見・保佐・補助・任意後見含む)
今後も高齢化が進んでいくためこれからも後見制度の利用者は増えていくものと考えられます。
手続きも迅速化をしており裁判所も本人や家族が使いやすい制度を目指しているようです。
また今回の統計から後見申立時の候補者についてが調べられることになったのは有益な情報です。
これまでは「候補者を親族にして申立てをしても選ばれないかも」思って制度の利用をためらう人もいたのではないでしょうか。
親族が後見人に選ばれることも大いにあるといえる数字でしたのでそのようなケースの方でも今一度制度の利用を検討してみても良さそうです。