成年後見人の不正についてなぜ国に賠償が命じられるのか?

2018年1月11日、成年後見制度に関するある裁判の判決が出ています。

簡単に要約すると、

という内容です。

被後見人の財産を不正に利用したのは後見人であるにも関わらず、なぜ国が賠償するという判決になったのでしょうか?

被後見人のお金を利用する際の、後見人の責任

成年後見人に選任されると、「自分以外の人のお金を管理する」という業務が任されることになり、それに伴う責任が発生します。

そのため、「手持ちの現金が不足しているのでボーナスが出るまでの少しの間だけお金を借りよう」などのような悪意が全く無い理由であっても、裁判所から不正な支出とみなされてしまうと業務上横領の罪が科される可能性があります。
つまり、自分のお金と本人のお金をきっちり分けて管理していないと、業務上横領になりうるということです。

また、後見人制度に限ったことではありませんが、不正にお金を利用した場合には、刑事罰だけでなくその損害を賠償する責任を負うことになります。

法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

民法 〜第703条〜

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法 〜第709条〜

今回の事案において、後見人にどのような意図や事情があったかは報道では触れられていませんが、被後見人の財産を使い込んでいたと報じられていることから、業務上横領にあたるものと思われます。この場合、民法に明記されているように、後見人にはお金を使い込んだことによる損害を賠償する責任が発生します。

なぜ国が賠償するのか?

後見人が被後見人の財産を使い込んだ場合、後見人が損害賠償責任を負うのは当然ですが、今回の判決ではに賠償命令が出ています。

今回の事案は、「後見人を監督する家事審判官(裁判官)が後見人の財産を使い込んだため国に賠償責任を認めた」という判決ではありません。
本判決を出した京都地裁は、「家事審判官が07年以降、継母の事務が適切に行われているか確認しなかったことを、成年後見人の監督の目的・範囲を著しく逸脱した」と認定しました。
つまり、「後見人の監督を怠ったことで被後見人の財産が使い込まれ続けため、後見人を監督すべき家事審判官が属する国が責任を取って賠償責任を負いなさい」ということを認めた判決になります。

本件と同様に、成年後見人の不正行為について、国に対しても賠償責任を認めている判例は過去にもあります。

上記の判例では、不正に気づいたもののその不正をやめさせるまでに7ヶ月もの時間がかかり被害が拡大してしまったため、この間に横領された231万円について損害賠償を認める、という判断が下されています。

成年後見人に不正な使い込みがあったからといって、必ず家事審判官の監督不十分として国の責任となるわけではありません。しかし、家事審判官が通常の業務を行っていれば防げたであろう、という内容については、今後も国に賠償命令が下される可能性はあります。

今回の判決を受けて裁判所は、成年後見制度における不正防止について、更なる対策を考える必要に迫られるでしょう。
そのため、第三者後見人の選任後見制度支援信託の利用が今後さらに推進される、ということが考えられそうです。

成年後見人による犯罪を防ぐためにできること

そもそも、成年後見人による不正を抑止することはできないのでしょうか?

不正を抑止するために打てる対策はいくつもあると思いますが、成年後見制度における後見人の不正を防ぐ方法は、不正を行いづらい状況を作るということが非常に重要だと考えます。

親族が成年後見人になっている場合には、やはり「家族のお金を家族のために使うんだから悪いことではないよね?」という心理が働いてしまっていると推測されます。

現状、親族が成年後見人になるためには、特段の研修なども必要ありません。
そのため、親族で成年後見人になる人への教育を必須にして、不正となる範囲の周知徹底および倫理観を醸成することで、不正の発生を抑止することができると考えます。

現状では、親族による不正を抑止するための対策として、第三者の後見人(専門職後見人、市民後見人)を増やすことが積極的に推進されているように見受けられます。それ自体は短期的に見れば有効な対策だとは思いますが、専門職後見人はその数に限りがあること、市民後見人はボランティアという特性上なかなか広がりを見せていないことを考えると、親族後見人の教育を進めることが急務ではないかと考えています。

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