昨年(平成29年)の『成年後見関係事件の概況』が最高裁判所より公開されています。
成年後見関係事件の概況 ―平成29年1月~12月-(PDF)
この『成年後見関係事件の概況』は、成年後見制度の利用に関する統計情報を裁判所が公開しているものです。
成年後見制度が開始された2000年から毎年欠かさずに情報が公開されています。
具体的には、
などの情報が公開されているため、この資料を眺めることで成年後見制度の現状を把握することが可能です。
今回は、昨年(平成29年)の統計情報と過去の統計情報を比較することで、成年後見制度の最新の利用状況を考察したいと思います。
まずは、成年後見制度の申立件数について。
ここ数年は大きな増減がなく横ばいという状況でしたが、平成29年は対前年比約4.3%の増加となっています。
65歳以上の高齢者人口は、内閣府より展開されている統計情報によると、今後も2040年頃までは増加の一途をたどる予測となっています。
高齢化の現状と将来像|平成28年版高齢社会白書(全体版) – 内閣府
高齢者の増加は認知症患者の増加につながる可能性が高いため、今後も成年後見の申立件数は増加していくと推測されます。
成年後見制度を利用することになった根本原因(開始原因別割合)が、今回の調査から公開されています。
成年後見制度を利用する原因は、認知症によるものが大半だという印象があるかもしれませんが、実際は認知症以外での利用が約4割を占めているのです。
「成年後見制度は、認知症の方だけでなく知的障害者の方や統合失調症の方も意識した制度であるべき」ということを、強く考えさせてくれる統計結果だと思います。
鑑定は、申立時に提出した『診断書』だけでは申立てられた類型(後見、保佐、補助)の妥当性が判断できなかった場合に、裁判所からの指示をもとに実施されるものです。
鑑定の結果、申立ての類型と異なる結果が出た場合には,類型を変更する必要があります。
鑑定を行い本人の精神状況を正確に評価することで、後見人の業務範囲を適切に設定し、本人の意志をより優先することができるということですね。
この鑑定の実施率が、平成28年と比較して低下しているという結果になっています。
(平成28年:9.2% → 平成29年:8.0%)
鑑定の実施率について、過去10年間の数値を取得してみた結果、「鑑定が年々実施されなくなってきている」という事実が見えてきました。
鑑定の費用は5万円〜10万円となっており高額であるため、「鑑定の実施割合が下がる」ということは、成年後見制度をより利用しやすい状況になっていると考えることができます。
しかし偏った見方をすると、申し立てられた類型の妥当性を深く審査されることなく類型が決定されている、という状況が発生しているとも推測できます。
もし本当に上記のような状況が発生しているのであれば、成年後見制度を利用することによって、必要以上に被後見人の行動が制限されてしまっていることになります。
成年後見制度は被後見人の権利を擁護することが目的の制度ですので、今後もこの統計情報は注視が必要ですね。
選任された後見人と本人(被後見人)との関係性の割合について、平成29年分も含めてその推移をグラフにしました。
平成29年の数値もここ数年と同様に以下の傾向が現れています。
なお、グラフ上では明記していませんが、市民後見人の数は平成29年は289人となっています。
平成28年の264人と比較するとわずかに増加しているものの、まだ全体の1%にも満たない状況です。
市民後見人の養成は各自治体が推進しているため、研修を終えた候補者はどんどん増加しているはずです。そのような状況にも関わらず市民後見人が大きな広がりをみせないのには、どこかにボトルネックがありそうですね。
成年後見制度の利用者数は、平成29年は210,290人となっており、対前年比約3.3%の増加となっています。
グラフの通り、毎年約8,000人ほど増加し続けている状況です。
毎年30,000件を超える申立てが行われていることを考えると、今後も利用者数は増加していくと推測されます。
このような統計情報を把握してその傾向の分析を行うことで、成年後見制度の問題点などが浮き彫りになってきます。
統計情報の収集にはそれなりの費用や手間がかかっているかとは思いますが、成年後見制度をより良い制度にしていくために、ぜひ今後も継続して実施して頂きたいですね。
なお、平成29を含む全ての情報はこちら(裁判所|成年後見関係事件の概況)にアップされています。
ぜひみなさんもご参照いただき、成年後見制度の現状を考察してみてください。