こんにちは、東京都目黒区の司法書士宮内悠衣子です。
本サイトの制作・運営に携わっています。
わたしは11年ほどの司法書士歴の中多くのご家族の方の成年後見制度の活用事例を見てきました。
その経験の中から、司法書士には最も密接な“不動産取引と成年後見制度”についてお伝えしたいと思います。
成年後見人等選任申立てのきっかけのうち、“不動産取引”は第4位です。(1位はダントツで“預貯金等の管理・解約”です)
全体からすると4位の“不動産取引”ですが、不動産登記の専門家である司法書士としては成年後見人等申立てを勧める最も多いきっかけです。
なぜかと言うと、不動産取引=不動産を売る時には必ず売主様本人の意思の確認が必要だから、です。
(不動産を買う時も同じです。)
よくある場面としては、知り合いの不動産屋さんから電話がかかってきて、「今度不動産を売るお客様がいるのですが、売主様ご本人様が認知症で寝たきりなんです。でも息子さんが手続きを進めるので、大丈夫ですか?」という場面です。
このようなケースでは、そのまま不動産の契約や決済をすることができません。
たとえ、ご家族の全員の同意があっても、息子さんを代理人として手続きしようとしてもできません。
というのも不動産の取引などは“契約”という法律行為なので、本人の意思が尊重されます。
寝たきりの方や認知症の方は、ご本人の意思が本当に不動産を売りたいのか、ということが確認できません。
確認できないとそのまま契約や、登記手続きをすることができません。
たとえそのままご家族が手続きをしてしまったとしても、法律上無効な行為であるため、後々になってトラブルになることが往々にしてあります。
買主さんから「あの時、売主さんは意思がなかったのでこの売買は無効ですよね!お金返してください!」や、他の家族の方から「あの時お父さんは寝たきりだったんだから、勝手に売ったので損害を賠償してください!」などなど・・・。
司法書士としても厳格にご本人様の意思確認を行わないと、所属の会から懲戒処分を受けたり、上記トラブルに巻き込まれるため、ご本人様の意思確認に関してはとても慎重に行います。
そのため、“売主様が認知症”といった案件では、家庭裁判所で成年後見人等を選任してもらうことをご家族に丁寧に説明しています。
このように不動産取引の場面で意思能力に不安がある場合は成年後見制度を利用することとなります。
成年後見人を選任し、不動産の取引を進めるまでは時間を要しますのでお早めの準備をお勧めします。